東京地方裁判所 昭和38年(モ)3089号 決定 1963年3月19日
申立人 東京都地方労働委員会
被申立人 大信化学工業株式会社
主文
被申立人を原告とし、申立人を被告とする当庁昭和三八年(行)第一八号不当労働行為救済命令取消請求事件の判決が確定するまで、被申立人は、申立人が都労委昭和三七年不第五一号事件についてなした命令(注一)中、高橋昭介及び吉岡茂樹を被申立人において原職又は原職相当の職に復帰させ、同人らが解雇された日から原職相当の職に復帰するまでの間に支給を受けるはずであつた賃金相当額を支払う限度において、右命令に従わなければならない。
但し、被申立人が当庁昭和三七年(ヨ)第二、一五九号地位保全等仮処分申請事件について発せられた仮処分決定(注二)に基いて前記両名に対し賃金を支払つた場合は、これを重複して支払う必要はない。
(裁判官 吉田豊 西岡悌次 松野嘉貞)
(注一)
東京都労委昭和三七年不第五一号昭和三八年一月二四日命令
主文
一 被申立人は申立人組合の組合員高橋昭介および吉岡茂樹を原職または原職相当の職に復帰させ、同人らが解雇された日から原職または原職相当の職に復帰するまでの間受けるはずであつた賃金相当額を支払わなければならない。
二 被申立人は申立人組合に対し、その組合員の氏名を無断使用して組合脱退届を出すなどの方法で申立人組合の運営を阻害しこれに介入してはならない。
三 被申立人はこの命令交付の日から三日以内に縦七十センチメートル、横一メートルの木板につぎの文書をかい書で墨書して、被申立人会社の従業員の見やすい場所に七日間掲示しなければならない。
記
昭和 年 月 日
文京地区合同労働組合
執行委員長 川崎忠文殿
大信化学工業株式会社
代表清算人 榎林力
会社が貴組合員高橋昭介および吉岡茂樹を解雇、また貴組合員佐々木米作、牧野初男および安次知虎雄の氏名を無断使用して組合脱退届を差し出したことは法律違反であり、今後このような行為をしないことはもちろん、貴組合の運営に介入するようなことはいたしません。
上記東京都地方労働委員会の命令によつて掲示いたします。
(注年月日は掲示した日を記載すること)
四 被申立人は第一項、第三項の命令を履行したときはすみやかに当委員会に報告しなければならない。
理由
第一認定した事実<省略>
第二判断・法律上の根拠
会社が高橋、吉岡を解雇したのは、両名が職制上の業務命令に服さず、職場規律をみだすことが再三であつたためであると主張するが、なんら疎明がない。また会社は、従業員間の動きについて敏感になつていたことが認められるので、本件解雇は両名の従業員会結成、またそれに続く一連の活動および組合に加入した事実を嫌つておこなつたものであり労働組合法第七条第一号に該当する。つぎに組合脱退届を郵送した行為は同条第三号に該当するから、申立人の主張はすべて認容すべきものである。そこで当委員会は労働組合法第二十七条および労働委員会規則第四十三条を適用して被申立人に対して主文のとおり命令する。
ただし主文第一項のうち賃金相当額の支払いについて被申立人は、仮処分申請人高橋昭介、吉岡茂樹、同被申請人本件被申立人会社間の東京地方裁判所昭和三十七年(ヨ)第二、一五九号地位保全等仮処分申請事件について同裁判所が昭和三十七年十二月二十六日発した仮処分決定にもとづいて前記両名が既に受領した金額と重複して支払う必要はない。
(注二)
東京地方昭和三七年(ヨ)第二、一五九号昭和三七年一二月二六日決定
主文
被申請人は昭和三七年五月二四日以降本案判決確定に至るまで毎月末日限り申請人高橋昭介に対し一ケ月金一四、七〇五円同吉岡茂樹に対し一ケ月金一三、四九二円の各割合による金員を支払え。